TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

欲望の資本主義 特別編 「コロナ2度目の春 霧の中のK字回復」

いつも楽しみにしているNHKBSの「欲望の資本主義」シリーズの最新版が放送された。今回も色々考えさせられた内容だった。

www.nhk.jp

今回は、人の心を切り離した既存の経済モデルから持続可能な社会の裏付けとなる人を考慮した経済モデルへの変化の動きを紹介するのが主題ではないかと思った。近年、格差の極大化で、資本主義に頼った社会の限界が露呈し、政府の果たすべき富の再分配機能の重要さが見直されてきた。そんな背景で必要なのが、本番組で取り上げた心の側面を取り込む経済モデルなのかもしれない。そして、今回、日本の宇沢弘文の社会的共通資本というのが紹介された。資本の論理ではうまく回らない我々の社会の持続性にとって重要なセクターの扱いを考え直す必要がありそうだ。アンドリュー・W・ローが、デカルトのI think therefore I amをもじって、I feel therefore I careと言ったのは今後の社会規範を示唆するものと受け取った。

近年の資本主義に大きく依存した社会では、経済主体として企業にフォーカスが当たりすぎていたと言えるだろう。北欧では駄目な企業は保護しないが、その代わり、失業者へのセーフティーネットが充実しているそうだ。人が中心の社会システムということではないか。こういう話は以前からよく聞くが、デンマークのこのモデルは、Flexicurity(Flexibility+Security)と言われているというのは知らなかった。番組の前半で小幡績が言ったように、「企業を保護するのではなく、人を保護することが重要」というのをきちんと実施しているのが、この北欧モデルと言えると思う。その意味で、コロナ禍というパンデミックで、ある程度緊急措置が必要な点もあったと思うが、日本では支援がやはり企業中心に構築されていて、人への直接的な支援は一度やっただけというあたりは、残念と言うしかない

最後のあたりで、澤上篤人が、投資は短期的な利益のためではなく、良い社会を作るための手段として捉えるべきということと、各自の行動は小さいが大勢がそれをやることで社会が変わるという意思を持って行動することが重要と、彼が自分のファンドでやってきたポリシーを強調していたのが印象に残った。澤上ファンドのアプローチは、最近のESG/SDGs投資の先達だったと言える。

全編を通してかなり登場したアンドリュー・W・ローのAdaptive Marketsは、今後の社会の方向性を占う上で、注目の経済理論になるかもしれない。ダーウィンの自然選択から着想を受けたようで、移り変わる環境に適応することが生き残る、しいては、持続することになるということだと思った。そのうち彼の本もじっくり読んでみたい。今後の理論の発展が楽しみである。