TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

ベーシック・インカム(Basic Income)がめざすもの

ベーシック・インカム(Basic Income or BI)が導入されることにより社会にどのような変化をもたらすと期待できるでしょうか。文献[1][2]に詳細な議論がありますが、個人的には以下の4点が重要だろうと考えています。
 
(1) 貧困からの脱却
 
BIで貧困を完全にはなくすことはできませんが、貧困から抜け出すことの大きな後押しとなるでしょう。貧困対策として生活保護の仕組みがありますが、家父長主義的な制度のためうまく機能していないというのが背景にあります。
 
(2) 安定・持続可能性
 
継続的な経済的基盤を得ることで、社会生活に対する安定(あるいは、持続可能性)の基礎を得ることにもなります。
 
(3) 自由
 
自由とは、自らの行動や選択に外部からの如何なる制約も受けない状態と言えるでしょう。社会で生活する以上、公共の観点での制約は必要ですが、なるべくそのようなものは最低限にしたいというのが、現代的な自由の考えと言っていいでしょう。しかしながら、現代社会では経済的な制約から行動や選択に制限を受けていることが多いです。たとえば、就労先がブラック企業でも、無職無給になることへの恐怖から中々辞められないという就業の自由に制約を受けているというのが一例です。専業主婦の女性が、決定的に夫婦仲が悪くなり離婚したくても(e.g. 家庭内暴力)、生活費がなくなる恐怖から離婚に踏み切れないという場合もあるでしょう。BIがあれば、そのような選択の自由への経済的な阻害要因をある程度除くことが可能です。
 
(4) 社会正義 - 社会配当による富の再分配
 
Guy StandingはBI導入の一番重要なポイントは社会正義の実現にあると言っています。社会正義とは、社会の富は共有財産であり、それは適切に配分されるべきであるということです。こういう考えを社会配当と言うようです。たとえば、トマス・ペインは、1795年に「土地配分の正義」で、土地は万人の共有財産であるが、それを私有していることを地代としてコミュニテイに還元すべきだと述べています。これは、今や固定資産税としてあたりまえですが、このような共有財からの徴収機能による社会配当を多くすることで富の再配分機能を正常化するという効果を期待できます。
 
個人的には、全ての社会の富を全員で平等に分け合うという極論には賛成しませんが、ある範囲においては有益な考え方だと思っています。その範囲というのは、富を生み出す際に使っている資源のなかで、人類の共有財産と言えるものから得られる富のことです。そのような富は、社会に公平に配分されるべきという意見には賛成です。
 
[1] Guy Standing、ベーシックインカムへの道
[2] 井上智洋、AI時代の新・ベーシックインカム