TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

電子本サービスの理想形 - Web3への入口として

Kindleなどの電子本サービスは、今や必須のサービスの一つとして認識されていると思います。私自身も相当前からのユーザーです。ただ、色々と現状のサービスには不満があるので、どうなるのが理想なのか、書いておきたいと思います。最後の方には、少し壮大な構想も含めて。

まず、現状のサービスへの不満点がいくつかあるのですが、その根本は、以下の点に集約されます。

 

電子本サービスは、 利用権にお金を払っており、所有権はない。

 

電子本サービスで購入したと思っているのはその本自体(すなわちその本の所有権)ではなく、そのサービスプラットホーム上でのその本の利用権(読書権)であるということです。

規約上そうなっているのはわかってますが、物理本と比べて、以下のことができません。これが大きな不満点です。

(1) 貸与 ... この本はためになるから家族にも読ませたいというときにちょっと貸すことができない。

(2) 管理 ... 個別のサービスでライブラリにコレクション機能があり管理できるものがある(*1)が、複数のサービスをまたがるとできない。物理本なら、自分の書棚にジャンルごとのスペースを設けて自分の観点で管理できます。

*1 Mac版リーダーだと個別でもできないのがほとんど。Kindle楽天KoboMac版だけ使えない。これはMacユーザーならではの不満ですが。

(1)は所有権がないので当然できないわけです。これを是とするなら、物理本と比べてもっと金額を安くすべきではないかと思います。これ良い本だから読んでみてと言って言われた人間が気軽に買えるようになるべきではないかと思うわけです。あるいは、期間限定で、特定の人に貸与できる仕組みを作るのでも良いと思います。これ、技術的になんの障壁もないですね。

個人的には、(1)について金額以外はまぁしょうがないかなと思わないこともないですが、一番問題だと思うのは(2)です。

複数のサービスを使っているのもあり、あの本はどのサービスで買ったかなと、複数サービスのリーダーを立ち上げて見比べることも結構でてきました。電子本の数が多くなってきて、Macだとコレクション機能が使えないリーダーソフトのせいで、いっそ複数の電子本サービスで分けて管理しようかと始めたのがある意味失敗ではあるのですが、とにかく、収拾がつかないような状態になりつつあります。

では、理想は、どういうものかというと、自分で(利用権を)購入した電子本の一覧を電子本サービスを跨って見たいということです。自分が買った電子本の一覧を見ることができるWeb上のサービス(インターフェース)で、コレクション機能などで管理ができるというのがあれば良いのです(*2)。これ、機能的には何も難しいものはありません。電子本サービスとそのサービス内での電子本を一意に指定できる電子本ID付与の方式を標準化すれば、簡単に作れるでしょう。問題は、すでに購入した自分の電子本の一覧を取得して、この電子本棚に登録する作業です。これは、電子本IDを標準化したら、各電子本サービスにAPIとして実装してもらうしかないです。なので、現状最大の障壁は、各電子本サービスがこういうAPIを実装してくれるかどうかです。あと、この電子本棚サービスから、直接リーダーを起動できると良いですよね。これもそういう起動の仕組みを各リーダーにサポートしてもらう必要があります。

*2 ブクログやReadeeなど電子本棚機能を備えたものがあるにはありますが、やはり、複数サービスの連携はできてないです。なので登録作業が現実的ではないというのが問題です。

ということで、電子本棚の要件は以下のようになります。

・自分で購入した電子本を管理できる機能。個人の裁量で作るジャンル分け。その他、購入日付、出版日付など書誌情報の属性でのソートの機能。

・電子本を選んでリーダーを起動できる機能。

・電子本サービスで購入すると、自動的に電子本棚にも追加される機能。

そして、各電子本サービス会社にサポートしてもらう必要があるのは、以下の機能となります。

・ユニークな電子本IDの導入

・ユーザーの購入した電子本IDの一覧を返す機能

・電子本IDの属性情報を返す機能

・指定された電子本を読むリーダーを起動する機能

電子本棚の物理本棚に比べた優位点は、検索やソート機能とほぼ無限の空間性にあると思います。さらに、その本を起点に検索するなどWebサービスとの連携もできます。

どうでしょう?皆さんも複数の電子本サービスに跨った自分の電子本を自分の視点で管理したくなりませんか?上記のように、そういう仕組みは技術的には何も難しいところはなく簡単に作れると思います。

 

Web3に向けて

 

こういう電子本棚サービスができたら、壁一面あるいはVRゴーグル越しの仮想空間に自分の購入した電子本の一覧を投影して、その時の気分に応じて電子本を選んで読んだりするというのを夢想しています。

で、思うのは、これって、本棚から始まるWeb3サービスとなりますよね。Web3サービスの入口コンテンツとして本棚というのは、とっつきやすくてとても良いのではないかと思います。上記で書いた電子本棚機能も、ブロックチェーンなどのWeb3の一連の技術でデザインできます。

そう考えると、最初に問題点として挙げた「所有権がない」という点も、Web3技術で解決できる可能性が出てきます。すでに、Gaudiyという会社がそういう構想を掲げているようです。

media.dglab.com

こういう将来像を考えると、電子本棚で始める仮想空間というのは、ビジネス的にもポータル性を備えたチャンスがあるのではないかと思います。

更に、将来の公的・私的を問わず図書館のあるべき姿もこういう形になっていくのではないかと考えます。

ということで、既存の電子本サービス各社もこういう視点で、各リーダーのライブラリ機能を見直してみてはどうでしょうか?

 

2023.06.08 追記

 

先日AppleからVision Proという新製品が発表されました。発表を見てすぐにこのブログ記事で提唱した電子本棚サービスをこのVision Pro内で使っている姿を想像してしまいました。将来、こういう電子本棚サービスが普通なものになっていると信じたいところです。

www.apple.com