TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

欲望の資本主義2020スピンオフ スティグリッツ大いに語る

今回の欲望の資本主義2020スピンオフは、このシリーズでおなじみのノーベル賞学者のJoseph Stiglitzのインタビュー特集。非常に共感できる内容が多かった。

www.nhk.jp

レーガンサッチャー以来の新自由主義は、グローバライゼーションや金融化とそれを支えるIT技術により、多少の不平等を生むかもしれないが最終的には皆が恩恵に浴すというTrickle-down Theoryで、世界中に浸透していった。しかし、これが、現在の資本主義の大きな問題の不平等(Inequality)を拡大してしまっているというのは、うなずける。様々な要因があると思うが、やはり所得の再配分がうまくいっていないからだろう。

現在の資本主義の問題の一つとしてスティグリッツがあげたのが、独占だ。GAFAのいるIT分野だけでなく、多くのセクターで大きな数社に占められている寡占化が進んでいるとのこと。これにより競争が鈍化してしまい、富の集積が固定化してしまっている。

MMTの議論で面白かったのは、近年の金融緩和でじゃぶじゃぶとお金を投入してもインフレになってないのでMMTによるお金の供給ぐらい問題ではないというもの。むしろもっと金融刺激が必要だと言うのがスティグリッツの考えのようだ。Federal Reserveをいくら増やしても実需がないと、結局銀行を助けているだけで、むしろ国が公共工事のようなインフラ事業で実需を作った方がましというのは、うなずける。企業が自社株買いをしているのも、同様に実需を生まないので経済の拡大にならないというのも、そのとおりだ。

最後に、ステークホルダー資本主義という言葉が出てくる。株式資本主義が不平等への解決策を示せないなか、多くの企業の経営者にステークホルダー資本主義という概念が浸透しつつあるようだ。株主以外の社員、顧客、コミュニティーなど会社が関わるステークホルダー全体を考慮した経営が必要になる。利潤にだけにフォーカスをあて株主だけを見た経営から、SDGsなどを考慮し、社会の一員としての貢献の中で利潤を上げる企業というものが今後の主流になってほしいものだ。

スティグリッツが最初の方で言った「利潤は目的ではなく、目的を達成するための手段である」「資本主義は民主主義の一部をなすもので、民衆のためである」という言葉が、ここにシンクロしてくる。行き過ぎた不平等を緩和することが、現在の民主主義に必要なことなのだと思う。