TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

欲望の資本主義2020スピンオフ ジャック・アタリ大いに語る

今回は、欲望の資本主義2020スピンオフのジャック・アタリ編。非常に興味深く視聴しました。

www.nhk.jp

今回、社会的流動性(Social Mobility)の重要さを利他主義(Altruism)と関連付けて説明してくれました。利他主義の一面としては、将来世代に幸せをもたらすことが現世代の将来のために必要であるということを意味しているようです。将来世代が生まれない、自分たちの将来に働き手となる世代がいないのは、悪夢以外のなにものでもないということです。そのためには、将来世代が幸せになれる仕組みを維持する必要があり、それが、親の収入や階層で固定されるのではなく、自分の才能・努力でその階層を乗り越えられる流動性が必要だということです。これは、スティグリッツも語っていた現代の資本主義の大問題でもある不平等の問題と共通していると思います。

さらに、スティグリッツの意見と類似すると私が思ったのは、政府の経済的役割についてです。アタリは、市場経済の不完全性を補うために政府による財政支出が必要だと言います。世界政府はないけれども、米国、英国、フランス、日本、中国の5大中央銀行による同盟が影の政府として機能して、膨大な流動性を供給し政府に財政支出をする時間的余裕を与えているが、政府は逆に意思決定しなくていいと勘違いして、実行がされていないことが問題だと指摘しました。スティグリッツも言及した政府による実需生成不足が問題だと言うことだと思います。

今後の世界のリスクの一つとして、「純粋さ」の追求という話が出ました。「純粋さ」というのは、将来は不確実で不透明であるので純粋ではなく、結果的に「将来より過去が良い」ということになると。極右と極左は「純粋さ」を求めているという点でリンクする可能性があり、両者は異なる視点だが、「純粋さ」という意味で、失われた楽園を求めている点で共通していると。(一方、民主主義は妥協の上に現実的な解決策を見出す。)たとえば、宗教的原理主義とエコロジストが同盟を結ぶと、新たな全体主義が生まれ、大きな脅威となる。こういう見方は、個人的には、新鮮でした。

終盤で、今後確実に起こることとして、以下の3点をあげていました。
  • 21世紀はアフリカの時代になる。
  • 中国が統一と現状を維持しようとしても大きな壁に直面する。次の20年で共産党は限界を迎える。
  • 米国は衰退しつつあり、だれが大統領でも内向きになる。この結果、ヨーロッパと日本は、「我々は一人である」(アメリカは助けてくれないという意味)という状態に適応する必要がある。
ちなみに、3番目に関連して、日米安保条約で安心してはいけなくて、アメリカは日本を軍事的に助けることはないと明言してました。
最後には、人間性とは何かということで、人の機械化に対して警鐘を鳴らしていました。人体の機械化には何らかの制限が必要であり、人間や自然を全て人工物に変えてしまうのは人の死を意味するとのこと。忘れてならないのはどうやって人間の本質を守るのかということだそうです。シンギュラリティなどの議論の行く先にこういう未来を考えている人達もいますが、人間性とは何かを含めた深遠な議論が必要そうです。