TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

毎年120万円を配れば日本が幸せになる by 井上智洋+小野盛司

「毎年120万円を配れば日本が幸せになる」というベーシック・インカム関連の本が出てたので読んでみました。

 ベーシック・インカムで必ず議論に登るのは、財源問題です。例えば、2020年にコロナ対策の一つとして、特別定額給付金10万円を全国民に配りましたが、約12億円かかったので、毎月10万円を全国民に1年間配ると144億円が必要です。このようなお金を国はどのように調達できるのかという議論になります。消費税を上げるとか、年金や社会保険の一部を止めてベーシックインカムに回すとか色々な議論がされています。

この本では、MMT理論的な考えで、財政均衡を図る必要はなく、必要なだけ刷ればいいという主張です。MMT理論では、通貨の発行権を持つ国では、財政の均衡を考慮せず、必要なだけお金を刷ればいいという理論です。ただ、ハイパーインフレにならないような制御は必要となります。実は、日本は、当局は認めませんが、大量の国債発行を長年しており、実質上MMT理論を実践している国とみなされています。でも、インフレが起こってないのは、みなさんご存知の通りです。中々、目から鱗が落ちるかのような気がしました。我々は、なんとなく、国債による国の借金はまずくて、返せなくなったらどうするかとか、ハイパーインフレになるのではという脅迫観念が染み付いていますからね。財務省の洗脳でしょうか?(笑)

これでいいなら、ベーシック・インカムの実現性はかなり上がってきます。

バブル崩壊後日本は長期にわたるデフレが解消できていません。この本でも指摘されているのは、ざっとまとめると、以下の3つの観点があると思います。

まず、日本政府の財政均衡派が進めてきた政策(財政均衡のための増税)では事態はまったく改善されておらず、別の方法が必要だと言うことです。

二つ目は、今までの多くの政策が企業サイドを助けるもので、いわゆるトリクルダウン政策(金持ちや大企業を潤すとそれが下々にも行き渡ると言う考え)を実施してきました。このトリクルダウンは欧米でも新自由主義として行われてきましたが、結局うまく行かなかったというのが現在の評価です。

三つ目は、日本はケチケチ病に取り憑かれているため、重点分野への機動的な財政出動ができず、競争力の強化ができていないということです。むしろ相対的に弱体化しています。例えば、ノーベル賞を受賞した中山先生が見出したIPS細胞の研究への投資も微々たるもので、中国や米国にすでに大きく遅れをとっています。これは一例に過ぎませんが、政府の投資が及び腰で不十分なままで、日本の競争力は大きく棄損され、今や日本は先進国とは言いづらい状況になっています。このあたりは、安宅氏の「シン・ニホン」にも詳しく述べられていますね。

日銀もインフレターゲットを明確に設定しているのですから、適度なインフレをもたらす政策を果敢に実施すべきでしょう。さまざまな観点からベーシック・インカムが最有力候補だと思います。

特に、COVID-19というパンデミックが起き、これが一旦終息したとしても、別のパンデミックが起ることは明白です。さらに、日本は、地震津波、火山噴火、台風、などの自然災害も、地球温暖化という背景もあり、今後益々増える可能性があります。そのような危機に対しても国民の最低限の生活を担保できる施策を政府は整備する義務があります。真剣にベーシック・インカムという手段を実施すべきだと思います。