TeaTown’s blog

持続可能な社会に向けた独り言

NHKBS1スペシャル 欲望の資本主義2020

NHK BSでここ数年主に年末年始にやっている「欲望の資本主義」シリーズは、毎回、アダムスミス、マルクスフリードマンケインズハイエク、など歴史上の著名人が語ってきた経済・社会システムに関して、現代の論客が現在の資本主義の問題とからめた解釈や批判や議論を織りなすという、とても知的刺激を与えてくれる番組です。

毎年楽しみにしているシリーズで、今年もその2020年版を興味深く視聴しました。

www4.nhk.or.jp

今回の番組で、ジャック・アタリが「経済政策よりもSocial Mobilityの方が大切」と言っていたのは慧眼だと思います。自分が属する社会階層から抜け出すチャンスを公平に与えることができる社会であるには、階層の固定化を防ぐ手段が必要です。

近年、資本主義が抱えている問題には様々なものがありますが、そのうちの大きなものは、二極化(富めるものとそうでないもの)が増大・加速してしまっていることだと思います。階層の固定化が起きているわけですね。資本主義が内在している自由競争は、経済活動を活性化させる上で効果的ですが、本質的に格差を生み出します。それを補償するのが、社会的還元機能なのですが、近年それが機能していないのではないかと言われています。たとえば、富裕層への高税率は緩和方向になっていますし、法人税も世界で削減競争が起きています。

さらに、井上智洋氏によれば、IT化(最近だと世間的にはAI化でしょうか)により高収入の知能労働者層の定型業務が置き換えられていき、それらの人々が低収入のサービス産業に移動せざるをえなくなる(求人があるのがここだけなので)という現象が起き、格差の固定化が強固になるとの観測もあります。[1]

このように二極化・富の偏在が拡大すると、将来不安が大きくなり、不安だとモノを買うのではなく、買う手段である「お金」をため込むという「ケインズ流動性選好」が起きるという話も番組で取り上げられていました。これは、いつまでたってもデフレが解消しない要因の一つだと思います。

将来不安を解消し、二極化を緩和する政策が、今世界中で求められていると思います。社会的還元策として、従来の累進課税生活保護などが機能していないのだとすると、別の観点の還元機能が必要でしょう。個人的には、Basic Income(BI)が良いのではないかと考えますが、BIには、倫理的な反論もありますし、財源確保に関しての考察がもっと必要そうです。

 

[1] 井上智洋、AI時代の新・ベーシックインカム